Share

ターニングポイントの先に Page7

last update publish date: 2026-10-03 09:00:18

 ――翌日の日曜日は特に何の予定もなく、家にこもって過ごしていた。

 座卓の上に領収書やら何やらを広げて在宅で仕事をしていると、スマートフォンに稜也くんから電話がかかってきた。

「稜也くん、どうしたの?」

『茜さん、……今話して大丈夫ですか? というか、今どこで何をされてるんですか?』

「今日は家にいて、今はみんなの分の領収書をまとめてたところ。そろそろ経理部に、経費の精算の申請出さないといけないから』

 そういえば、私たちが付き合うことになった日にも二人で残業させられて、遠藤元室長に押し付けられた清算業務をやっていたなぁと思い出す。

『そうですか。遠藤さんと違って、茜さんはそういうところキチンとしてますよね。経理部長も喜んでましたよ。「さすが尾崎さん、管理職の

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 恋の才能 ~年下御曹司はバリキャリ女の私にご執心!?~   ターニングポイントの先に Page7

     ――翌日の日曜日は特に何の予定もなく、家にこもって過ごしていた。  座卓の上に領収書やら何やらを広げて在宅で仕事をしていると、スマートフォンに稜也くんから電話がかかってきた。「稜也くん、どうしたの?」『茜さん、……今話して大丈夫ですか? というか、今どこで何をされてるんですか?』「今日は家にいて、今はみんなの分の領収書をまとめてたところ。そろそろ経理部に、経費の精算の申請出さないといけないから』 そういえば、私たちが付き合うことになった日にも二人で残業させられて、遠藤元室長に押し付けられた清算業務をやっていたなぁと思い出す。『そうですか。遠藤さんと違って、茜さんはそういうところキチンとしてますよね。経理部長も喜んでましたよ。「さすが尾崎さん、管理職の鑑だ」って』「それは褒めすぎでしょう。私はただ、管理職として当たり前のことをしてるだけなんだから」『いえいえ、そんなことないですよ。それに比べて遠藤さんはいい加減でしたもんね。茜さんに丸投げして残業までさせて』「……そういえばあったわね、そんなことも」 ちょうど今、彼も私と同じことを考えていたんだなぁと思うと、何だか愛おしく感じた。 私は彼のことをキライになったわけじゃない。顔を合わせないようにしたのはお互い冷静になるためだった。そして今、冷静になった私はこう思っている。やっぱり私は彼のことが好きだから、この先も一緒にいたい。離れたくない、と。「――ところで稜也くん、今日はどん

  • 恋の才能 ~年下御曹司はバリキャリ女の私にご執心!?~   ターニングポイントの先に Page6

     ――翌日の土曜日。私は姉と会うことにした。昨夜のうちに、「会って相談したいことがある」と連絡を取っていたのだ。「お姉ちゃん、せっかくのお休みなのに呼び出してごめんね」「いいよ。茜の方からあたしに『会いたい』って連絡くれるの珍しいもんね。新婚家庭に気を遣ってくれてどうも」 待ち合わせていたファミレスで落ち合った姉は、謝る私にカラカラと笑った。 「今日はね、ダンナは休日出勤なの。だからゆっくり時間取れるよ。――で、あたしに相談したいことって何? なんか相当深刻そうだったけど、愛しの稜也くんとケンカでもした?」 オーダーした料理が来る前に、先にドリンクバーで汲んできたオレンジジュースを飲みながら姉が問うてきた。私もウーロン茶で喉を潤してからおずおずと答える。 姉も姉のダンナさん――義兄も稜也くんのことは気に入っているようで、「あんたたちいつ結婚するの?」と冷やかされているので、これはこれで困っているのだけれど。それはさておき。「ケンカっていうか、私が一方的にやらかしちゃったっていうか……」 私は姉に引き抜き話が来ていること、彼に話したけれど彼から「それは茜さん自身が決めることだ」と冷静に言われて悲しかったことを話した。「でね、『どうして引き留めてくれないの?』って。『私がこの会社からいなくなっても、あなたは淋しくないんだ?』って言っちゃって。……でね、今日と明日はお互いに冷静になって、自分の心と向き合おうってことになって」「……なるほどねー。悪いけど、あたしも稜也くんの意見に賛成だな。別の会社に行っちゃったくらいで終わっちゃうなんて、それだけの関係だったってことなんじゃないの? でも、あん

  • 恋の才能 ~年下御曹司はバリキャリ女の私にご執心!?~   ターニングポイントの先に Page5

    「――このままじゃ、私ホントにこの会社からいなくなっちゃうよ? それでもいいのね? あなたは淋しくないんだ?」「ちょっと茜さん、落ち着きましょ? 冷静に、ね?」「これが冷静でいられるかぁ!」 稜也くんが私を落ち着かせようと肩をつかんできたけれど、頭に血が昇っている私はその手を乱暴に振り払った。そのままポロポロと泣き出し、言いたくないことまで言ってしまう。「私……、稜也くんのそういうところがイヤなの! どうして自分の恋人が会社からいなくなるかもしれないのに、そんなに落ち着いていられるの? 信じられない!」「だから落ち着きましょって。別に茜さんがこの会社を去ってしまったからって、僕たちの関係が終わるわけじゃないでしょう? ……とにかく、お互い一度冷静になって、自分の心と向き合った方がいいと思います。僕も今はちょっと頭が混乱しているので……」 彼が混乱しているなんて信じられない。だって、彼はこんなに冷静で……。でも、今の言葉からは普段の彼の冷たさは感じられなかった。「…………うん、分かった。私も言い過ぎたかもね。ごめん。それじゃ、明日と明後日は顔を合わせない方がいいかな」 幸いにも今日は金曜日。週明けまでは出社してくることもないはずなので(管理職になったので、不測の事態が起きれば出社しないといけないかもしれないけれど)、デートの約束をしなければ稜也くんと会うこともない。冷静になるには、一度距離を置いた方がお互いのためにもい

  • 恋の才能 ~年下御曹司はバリキャリ女の私にご執心!?~   ターニングポイントの先に Page4

     ――その日の夜、お腹いっぱいになってマンションに帰り着いた私は、夕方の稜也くんとのやり取りを思い出していた。 あれはどう考えても彼の本音じゃない。「もしも」の話だから、あんな冷たい正論を言ったに過ぎないのではないか。そう思ったのだ。彼も本心では、私に会社を去ってほしくないと思っているに違いない。そう思いたかった。 でも……、これが「もしも」の話ではなく本当のことだと知っても、彼はきっと同じように言うんじゃないか。そんな気もしている。「私はただ、彼が背中を押してくれるなら引き抜きの話、受けてもいいと思ってるだけなのになぁ……」 彼に引き留めてほしいと願いながらも、そう思ってしまうのは矛盾していると自分でも分かっているけれど。だからこそ私は悩んでいるのだ。「ホントにもう、どうしよう……」 モヤモヤした気持ちのまま私は部屋着に着替えてシャワーを浴び、眠ろうとした。けれど結局一睡もできず、朝を迎えてしまった。   * * * *「――はい、ただいまメールを確認致しました。そちらに送付した資料に不備があったとか。 ……はい、大変申し訳ございませんでした。こちらの確認不足で、御社には多大なご迷惑をおかけ致しました。これから誠心誠意、対応させて頂きます。……では、失礼致します」 数日後の午前。オフィスで受話器を戻した私は大きなため息をついた。そしてこの件を担当している二人の部下をデスクに呼ぶ。「冴島くん、中田さん。ちょっと来てくれる?」

  • 恋の才能 ~年下御曹司はバリキャリ女の私にご執心!?~   ターニングポイントの先に Page3

     ――それからの私はというと、普段ならしないミスを連発してはチーフである稜也くんから「本当に大丈夫なんですか?」と心配される始末。本当に情けない上司だ、私って。 それでもどうにか定時には仕事を終え、退勤後は真優と一緒に夕飯を食べに行くという約束があるので(専務との外出から早く戻って来られたらしい)、帰り支度を始める。 気がついたら堀内くんや中田さんなど他のメンバーは早々に帰ってしまって、稜也くんと二人だけが残された。……う~ん、気まずい。「――あの、茜さん。今なら僕たち以外に誰もいませんから、あえてお訊きしますけど。本当に悩んでいることは何もないんですね?」「……だからないってば。どうしてそう思うの?」「昼休みを終えて戻ってきてからずっと、茜さん、様子がおかしかったので……。体調は悪くなさそうだったので、だとしたら何か悩んでいるんじゃないかと思って」 私は肯定も否定もしない。引き抜きの話を、まだ彼にするわけにはいかないと思っているから。だからその代わりに、彼にこんな質問をしてみる。「……ねえ稜也くん、私がもしこの会社からいなくなったら……って考えたことある?」 私って何てズルい女なんだろう。こんな、彼の気持ちを試すようなことを訊くなんて。「いなくなる、って……。茜さん、この会社を辞めるつもりなんですか?」「あ……、ううん。そうじゃなくて、もし他社からの引き抜きの話があったとしたら……。稜也くんはどう思う?」 彼はどう答えるのだ

  • 恋の才能 ~年下御曹司はバリキャリ女の私にご執心!?~   ターニングポイントの先に Page2

    「――えーと、それは……つまり、私をヘッドハンティングしたい、ということでしょうか?」「ええ。そのような解釈で合っています。わたしは今日、あなたを弊社に呼びたいと思い、こうして足を運んで来たんです。……アポなしで参りましたのは申し訳なく思っておりますが」 私が混乱する頭で必死に捻りだした結論に、南沢副社長は大きく頷かれた。私を引き抜きに……? どうしよう? 急にそんなことを言われても困る。どう返事をすればいいのだろう?「はぁ……、そうですか」「弊社へ謝罪に来られた際の落ち着いた対応、その誠意に満ちた態度に兄が大変感服致しておりましてね。『彼女にはぜひとも、わが社でその能力を遺憾なく発揮してもらいたい』と申しておりまして。もし来て下さるようなら、それ相応の待遇を用意しているから――と。年収は千二百万円で、あなたのお望みのポストも用意する、と申しております」「年収、千二百万……」 思わず私の心がグラついた。そんな自分に内心愕然となる。 この会社での、今の私の年収は一千万。月収は六十万、プラスボーナス支給が年に二回でその金額である。それが年収千二百万ということは、少なくとも月収だけでも七十万~八十万になり、それプラスボーナスも出るということだ。収入の面だけ見れば、この話はすごく魅力的ではある。 それに、東亜商事は私を必要な人材だと言ってくれ

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status